概要

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 現代の最先端学術研究は益々学際化しており、革新的な物質創製を実現するためには、複数研究分野の有機的連携が必要不可欠である。すなわち、それぞれに特徴ある世界水準の研究活動を展開してきた研究機関といえども、多種多様なすべての物質様式を包含することは困難であり、特徴ある物質創製研究を推進している他大学機関との連携を図ることが是非とも必要である。物質創製における我が国の優位性を確固たるものにし、次世代の物質文明の基盤を支えるためにも、各グループがもつ化学研究の力量を結集できる、実践的な機関連携研究組織の構築を迅速に行なわなければならない。

 このような背景のもと、物質階層を構成する「元素」(京都大学化学研究所附属元素科学国際研究センター)、「分子」(名古屋大学物質科学国際研究センター)、「集合体」(九州大学先導物質化学研究所)の研究を融合するべく、大学間連携研究「物質合成研究拠点機関連携事業」(H17~21年度)を実施した。これは本事業の基礎となるもので、各物質階層を縦断する新物質の合成と新機能の開拓において卓越した研究成果を挙げ、また有為な人材を多数輩出することにも成功した。本事業では、各物質階層における化学研究の融合を踏まえ、「物理的物質合成概念」および「生命物質合成概念」をも包含する新たな「化学物質変換概念」を創出し、統合的な物質創製化学を実践する。あらゆる物質階層における物質変換概念において「触媒」が一つの共通キーワードとなるため、触媒研究の国際研究拠点である北海道大学触媒化学研究所をこの組織に加え、連携研究体制を強化・充実させた。特に、北海道大学触媒化学研究所が得意とする固体触媒は、緊迫するエネルギー環境問題解決に必要不可欠な研究要素であり、4研究機関の有機的連携により、最先端バイオ・情報技術からエネルギー・環境問題にまで至る、新物質・新反応・新機能の開拓に、総合的観点から取り組むことのできる、強力な研究組織が整備される。研究機関間の緩やかな連携は欧米先進諸国でも実施されているが、それらの多くは特定テーマに限定的である。物質創製化学研究を革新し、異なる物質階層および異なった物質変換概念を包括的に推進する本連携事業は他に類例を見ないものである。